Indeed Technologies Japan(株)を11月に退職します。既に最終出社は終わりました。今のところ再就職のつもりはありません。*1
2015年4月から11年半、所属会社を変えながらもIndeed Tokyoのメンバーとして在籍し続けていました(うち1年8ヶ月育休、6ヶ月無給休暇、1ヶ月傷病休職)。
なお、同僚に伝える際にも言ったことですが、これは完全に自主的な退職であり、何らかの"提案"💴がなされたわけではありません*2
おことわり
一部の人が気になるであろう、Indeedでの業務内容など、退職エントリに含まれがちな内容は、あまり書かれていません。
また、個人的なメモを元にしているため、以下だ・である調になります。
退職の動機
退職に至る単一の動機や原因はなく、複数の動機が重なった結果、退職が半ば自明な選択肢として現れたもの。
- 将棋ったーに割く時間のほうが充実感がありやる気に満ちている
- 2024年12月から2026年7月下旬まで、育休を取っていた。この約1年8ヶ月を通してほぼ毎週リリース&アナウンスをしており、リズムができているところ。この期間中に第一回世界量子将棋大会を開催したり、公式Discordを立ち上げて量子将棋や様々な変則将棋の愛好家が集うような場になってきている。
- 公式Discord参加者は100人近くになっており、新ルールについて話し合ったり、一部は変則将棋などのYouTubeコンテンツを作ったり*3量子将棋の棋戦を開く*4などもしている。
- 2026年はコーディングエージェントの能力が飛躍的に向上している年。AIを伴った個人開発で、一人でどこまでいけるかとても楽しみな時代になっている。
- マッチングシステム、またそれを主体としたアプリ化の構想もあり、現在進行中の変則将棋AIの開発も含めて実現したいことがたくさんある現状で、これに背を向けていきたくないというのが正直なところ。
- コロナ後遺症との兼ね合い
- 前提:2023年5月に新型コロナウイルスに観戦し、直後からブレインフォグや倦怠感を主とした新型コロナ後遺症にかかった。その後1ヶ月ほど傷病休職、3ヶ月の無給休暇をとっての休養などをしたが、頭脳がコロナ前の調子に戻ってはいない。
- コロナになってから断続的に、有給に頼りがちになり育休やVoluntary Work Program (90日無給休暇を選択できる)を心待ちにしていた。子どもを持ちさらに限界に近づいたのだと思う。
- 諸々のことから育休再開後一ヶ月近く仕事をやる気が出ない日が多かった。
- 復職して最初の週は特に、1時間働いてはいつ休憩するかを考える、などといった状況で、大変だった。初週2日休む。会議の内容を追いきれない時も*5。
- 疲労の緩和のために昼食後1時間程度昼寝をしていたが、仕事の時間が十分に取れず、また午前の記憶とブツ切れになってしまうことから不完全燃焼状態になっていた。
- 朝起きて辛い時などに日程再調整したり成果の出し方を調整しないといけないことに疲れた。(スタンドアップミーティングで何か話すことがあるのかどうか等)
- 一方、息子と過ごしたり将棋ったーの開発などをしたりする限りではこういった問題は起こっていない。
- 前提:2023年5月に新型コロナウイルスに観戦し、直後からブレインフォグや倦怠感を主とした新型コロナ後遺症にかかった。その後1ヶ月ほど傷病休職、3ヶ月の無給休暇をとっての休養などをしたが、頭脳がコロナ前の調子に戻ってはいない。
- AIによるSoftware Engineer正社員アイデンティティの揺るぎ
- コーディングはパズル的でクラフトする楽しさがあり*6、また早書きで時間的余裕を作ってプラスアルファで成果を重ねるというスタイルを取っていたのだが、クラフト部分の一定割合がAIに取って代わられたという感じがある。*7
- AIに移譲できることが右肩上がりで増えているのに、既存の肩書があるためその分野のこと(コンピュータサイエンス、UX, ...)に通じていて会議でリアルタイムで貢献できる状態にあることが期待される。人間はどんどん高次元の理解をするだけで済むようになる中、従前の職種別の役割を担い続けるのは少し違和感がある。この時代、個人開発、少人数開発ではすごい速度で物事が進んでいくのではないか。
- なお、復職前は「会社員ということはAI = Claude Code使い放題だ」と思ったが、やりたいことや要件のすり合わせなどでコーディングにはなかなか到達しなかった。結局ソフトウェアに対する時間よりも同僚たちに対する時間のほうが、AIコーディングなしでも多い。
- また出てくるコード変更量は多くなるためコードレビューの負荷も高くなった。書くのは楽しく読むのは大変ってことあるよね。
- なおSourcegraphのDeep Searchはコードや現行の挙動を把握するにはなかなか優秀だった。
- その他の、仕事でのそれほどエキサイティングではないこと
- 成果物による満足感でいくと、仕事の開発は、やはり自分のやりたい、やるべきと思っていることを優先できる個人開発にかなわない。
- 学び・成長による満足度は、新卒から11年勤めていることもあり、あまり高くない。
- 息子との時間を過ごすため
- 息子が1歳半であるこの時間は、二度と戻ってこない。
- 家庭のための時間を取るため
- 例えば、物を1つ買うのに、商品の選定だけで何ヶ月もかかっていたり、直さないといけないなと思いながら放置されている箇所が家のなかに多い。
- 具体的には、ダイニングテーブルを買う際、セットのチェアが気に入らずテーブルだけ買ってチェア探しを継続するも、数ヶ月で出産となり1年半はチェアを買えず、不釣り合いなオフィスチェア1つとロッキングチェアを使って生活していた。(息子が1歳4ヶ月まで夜泣きが続いたため頭脳が使えない状態が多かったこともある。)
- 他にも居間のカーテンが半分しかカバーできておらず朝早起きの息子への直射日光を防ぐためにカーテンをずらすというのを毎日やっていたがこれを2025年のみならず2026年も続けたまま夏が終わってしまった。
- 端的に言うと、貯まるお金に比して使う時間がなさすぎるというところ。
- これまでは妻と2人が仕事して寝て最低限暮らせれば事は進んでいたが、子ができてこれではダメだと思った。
- 例えば、物を1つ買うのに、商品の選定だけで何ヶ月もかかっていたり、直さないといけないなと思いながら放置されている箇所が家のなかに多い。
- 息子の保育園入園を先延ばしにできるかも
- 1年半育休、3ヶ月バーブシカ(ロシア語で*8おばあちゃん)による助けのあと11月から3月いっぱいまで、我々が入れたいと思っているこども園には入れなさそう。ほかの園にこの5カ月間は入れたくない。本当の理想としては3歳まで入れたくないところでもあったが。
- 若い時間を意識的に過ごすため
- 36歳。人生の先輩に、35から40はあっという間だと言われた。ここをズルズル、モヤモヤ状態で通過したくない。
- 子が生まれてから、代替わりしたという思いからか(あるいは産後鬱か)人生は有限であるという意識をするようになった。
- また、以前無給休暇を取った時も人生における気付きがあったし、まとまった将棋ったーの技術的負債返済ができたこともあるので、時間を得ることでより豊かな人生が送れるようになるのではないかという期待もある。
- 以前、新卒で働き始めて順調に3, 4年たったある日、このように全力で毎日働いているだけでいいのだろうかと漠然と思ったことがあるが当時は回答できず流してしまった。今ならできると思う。
退職のデメリット、懸念
- お金
- これほどの高給は他にはないし今後もありつけない可能性が十分ある。
- 妻は当面働く予定。なお妻の方が給料高い。
- 貯蓄は十分してある。資産運用でも成果が出ている。これに関して妻も仕事をやめることになっても問題がないよう二人で確認してある。
- 心理的にも胸を張れるくらいこれまで稼いできたと思う。これを今後失う恐れといったものは一切ない。
- 人生がたくさん給料を稼ぎ天国での座席を決めるゲームであれば退職は選ばないほうがいいかもしれないが、人生はそうではない。
- コミュニティを失う
- 社内の技術的に進んでいる人たちを追えなくなったり、毎日顔を合わせるメンバーが家族以外にいなくなることは、技術面、精神面でのデメリットなことは確か。
- ただ、リモートになってから同じチーム内の同僚との友情的な繋がりは希薄になっている。最初の5年間、コロナ前のフル出社時代はやはり良かった。朝来て顔を合わせ、スタンドアップが始まる前に雑談し、ランチで雑談し、会議室で会議の前後に雑談し、仕事終わりにキッチンでだらだらしているところに卓球(オフィスに備え付け)や夕飯の誘いなど。
- たまに東京に出てオフィスにふらっと行ってNさんや旧Aチームのメンバーと雑談できなくなるのは残念。
- それはそれとして、たまに東京に出て友達と会ったりイベントに出たりするのはやるべき。この秋の東京訪問を検討している。ちなみに11月まで有給消化中の社員なので何の問題もなくオフィスに入れる説もある。
- 会話が減ることによる老化
- 上と重なるが、友達と会うことはやるべき。同期のK君とは数ヶ月ごと通話すべきか。
- 世間体
- 働いていないというのは見ようによっては体が悪い。
- 自分の事業をやりつつフレキシブルに子育てするという形で説明しようと思う。
- 将棋ったーでまともな収益が出ないうちは、公式には専業主夫ということになると思う。
- 尻を蹴られないため、たるんだ生活になる可能性
- 仕事において、成果をスタンドアップ、1:1、評価など様々な頻度でチェックされており、
- 暮らしのゴール、息子に関するゴール、将棋ったーに関するゴールなどをQごと、月ごとに設定するようにしたい。
- 自己の喪失
- 妻は復職して「仕事をする自分」というものを取り戻して満足しているそうだが、自分にそんな感じはない。
- ドラマSeveranceでいうInnieとも近いか
思い出
- 最初の5年は最高だったな。イケてるオフィスでがむしゃらに働いていろんな国の人たちとランチの時に交流していた。オフィスは小さくみんな顔見知り。金曜夜は酒を交えて熱く議論を交わすロシア語話者たちもいたな。コロナでリモートになりこれが途絶えたに近い。
- 自分の足つき将棋盤駒をオフィス備え付けかのように設置して*9自社の求人ページにデカデカと載ったり、セグウェイ的なホバーボードをオフィス内で乗り回したり*10、毎日卓球したり、やりたい放題だった。

私物の将棋盤駒

ホバーボード - 入社当時英会話ができなくてセブ島に送られ一緒に修行した同期とも、その後オフィスでの初ローテーション時に隣の席で一緒になった同期とも、退職時点で同じチームにいた。
- リモート化で仕事が作業となってしまった。これまでは雑談、食事、移動、たまに遊びに出かけるなどを含んだ生活そのものでもあった。
総括
過去を振り返ると名残惜しい気持ちはあるが、過去に戻れるわけではないし、将来を考えるとこれがベストに思う。明日世界の終わりが来てもダンス・ナンバーで踊り続けよう。*11
*1:再就職しようとすれば失業手当が貰えるそうです。私の場合は月24万円程度(手取り)。再就職したがらせる経済的インセンティブが設計されています。
*2:最近サイレントレイオフが起こっているという噂あり。会社から、配置換えをするかNヶ月分の給与を取って自主的に退職するかの提案がされるとかされないとか。いいなあNヶ月分の給与。完全に自主的だとそんなものは貰えません。
*5:長期の育休を明けてチームがやっていることが全然違うということもあるが
*6:同じくソフトウェアエンジニアである妻と、2018年頃、夜の目黒の公園で「パズルをやっているだけでお金が稼げて、なんていい仕事だろう」「でも我々なんかすごい後輩にすぐ抜かされるんだろうな、給料も下がるんだろうな」と話し合ったことを覚えています。しかしまあ、すごい者でなくすごい物が来るとは。
*7:tech debtとなったイケてないコードのリファクタリングを、機能追加に際してあらかじめやることによって機能追加を簡単にする相乗効果を得るのが好きだった。AIコーディングになってtech debtが増えているはずなのでそこは楽しみとして残っていたかもしれない。
*8:妻と該当のおばあちゃんはロシア人です
*9:たまたま来ていた本社のお偉いさんみたいなNさんに二つ返事で許してもらった
*10:たまたま来ていた本社のお偉いさんみたいなNさんに二つ返事で許してもらった

















































